空は澄みきり、紅くなっていた葉もとっくに落ち切った。
博麗神社。
その微妙なバランスに成り立つ神社の境内を掃除していた
霊夢の元に、見知った顔をした一人の訪問者が現れる。
見知った人物ではなく、あくまで見知った顔をした人物である。
霊夢
「あんた……いったい何者?」
その問いかけに、訪問者は首をひねって答えた。
霊夢?「……博麗、霊夢だけど?
あんたこそ何者?」
霊夢は無言のまま、参拝に現れたもう一人の自分を見つめていた。
それは、幻想郷の至るところで始まる"とある異変"の始まりだった。
幻想郷の各地でも、不思議な現象は発生していた。
紅魔館には、深く紅い霧が立ち込め、
白玉楼からは、西行妖の花弁が舞い散り、
永遠亭では、いつかのように偽りの月が頭上を覆う。
それはまるで、それぞれを舞台にした事件の模倣のように。
そして、本当の舞台は無名の丘のそのまた向こう。
遙かに広がっていた平原の姿は、確かに変容を遂げている。
魔理沙「こりゃすげぇな……アリスが驚いたのもわかるぜ」
アリス「でしょう?
いくら偶にしか来ないからといって……私たちの知らない間にあんなものがあるなんて」
アリス「まるで知らない場所に迷い込んだみたい」
忽然と現れた池にそびえる西洋の巨城。
水面に映る双子のような、白亜の洋館が聳えている。
冬の張りつめた空気のように静まり返った屋敷の中。
その洋館の主は、椅子に優雅に座りながらゆっくりと
机を眺めていた。
その卓上には、古き縁しい遊戯版が置かれている。
こつん、と城主が駒を動かす。
そこは白と黒の交錯する知識と渇望の戦場。
様々な人々の考えを駒に、今……新たな遊技が始まるのか
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